2008-01-01から1年間の記事一覧

『平田俊子』詩集を読んで−掃除の間の読書

平田俊子の詩集が出てきた。読み返して時間を潰す。 詩は引用に適していると思う、ので冒頭の代表作「ラッキョウの恩返し」から。 「ラッキョウは苦手なんです」「そうかい 僕は好きだよ」 こんなたわいない会話を誰かが聞いていたのだろうか 次の日からラッ…

カフカの日記を読んで−クルタークのCDを聴く

「カフカを焚刑に処すべきか?」というセンセーショナルな特集が、戦後間もない頃に共産系の週刊誌に組まれたと知り、多少驚くも、その答えはすでに作者が用意していたなと考えた。 彼は、自分の作品を焚刑に処したいという欲望にかられながら生き続けたし、…

疲れた夜に−『リパッティ』

『ディヌ・リパッティ』の詳細は今更ここで、書くこともないだろう。 疲れた深夜に、秘かに彼のCDを聴く。 『リパッティ』の演奏を聴く度に、”言葉による表現”が如何に無力か思い知る。 一歩間違えれば、通俗な演奏になるかもしれないが、それを許さないの…

『悪魔のいる映画史』

タイトルは「悪魔のいる文学史」または、「悪魔のいない文学」のもじりのつもり。悪魔のいる文学史―神秘家と狂詩人 (中公文庫)作者: 澁澤龍彦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1982/03/10メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (12件) を見…

『匣の中の失楽』−双葉文庫版の書評を読んで

『匣の中の失楽』を読んでいないミステリファンは少ないだろう。 が、もし未読なら「双葉文庫版」を推薦する。巻末の書評が実に充実しているからだ。匣の中の失楽 (双葉文庫)作者: 竹本健治出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2002/10/01メディア: 文庫 クリッ…

「ウゴルスキ」を聴いて−少ないYoutube!

「ウゴルスキ」の名前を初めて聞いたのは、「ディアベッリの主題による33の変奏曲」。(そりゃそうだ!)CDを聴いて、この曲の面白さを初めて知ったのだ。(「ブレンデル」のCDでしか聴いたことがなかった)日本でも彼の名が知れ渡ったのはこのデビュ…

「クリストファー・ウォーケン」

Wikiで「悪役」を検索すると、数少ない外国人悪役のなかに『クリストファー・ウォーケン』の名前があった。 彼については、Christopher Walken on stage and screen - Wikipediaを参照のこと。 彼が、スターになった出世作はいうまでもなく、「ディアハン…

中井英夫の『流刑地にて―ホモ・セクシュアルについて』−月光領域に生きる覚悟

中井英夫氏には、生涯一度だけのファンレターを書いたことがある。 返事のハガキには「一度遊びに来て下さい」とあったが、行かずじまいで終わった。 氏の『流刑地にて―ホモ・セクシュアルについて』は1979年9月に書かれたエッセイ。 当時と今の同性愛…

「このミステリがすごい」&「20世紀の幽霊たち」

そろそろ各ジャンルで今年のベスト10とかが発表される時期になった。 (出版社の思惑が働いていると知りつつ)「このミステリーがすごい!」の2009年版を読む。 海外部門のBest1は『チャイルド44』。これについては、異論はない。チャイルド44 上巻 (新…

『エソルド座の怪人』−未知の作家が溢れている!

『エソルド座の怪人』は、「異色作家短編集」の最新版の最後第20巻で、旧版にはなかった世界各国の作家のアンソロジー。エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇 (異色作家短篇集)作者: G・カブレラ=インファンテ・他,レイモン・クノー,ナギーブ・マフフーズ,…

悪役の魅力「ルトガー・ハウアー」

『ヒッチャー』のリメイク版をみて、腹が立った。 1986年の「R.ハウアー(Rutger Hauer)」が、助演?のJ.ライダーを演じた不条理なサスペンスの名作にケチがついたように感じたからだ。 ストーリーは単純だ。ただ、車の搬送をしている若い男が、謎の男…

「クライヴ・バーカー」

『クライヴ・バーカー』を初めて知ったのは「血の本」シリーズ。「ミッドナイト・ミート・トレイン」でいきなり衝撃を受けた。 今までのどんなホラー小説とも違う"新しいホラー小説家"だ!と夢中になった。そのグロテスクな面な描写を非難するむきもあるが、…

「イアン・マッケラン」

「イアン・マッケラン」の「ゴッド・アンド・モンスターズ(Gods and Monsters)」を再度みた。「イアン・マッケラン」については、もう付け足すこともないだろう。Ian McKellen - Wikipedia 今回、この映画をみて、「ゴールデンボーイ(Apt Pupil)」Apt Pupil (f…

石川淳と三島由紀夫−タオイストと芸術家の対話

以下の記事は『石川淳』との対談集の抜粋を中心に書く。 (よってあくまでも「石川淳」と「三島由紀夫」の対談を通して、別の側面からの”三島像”を浮かび上がらせようという主旨です。) 三島由紀夫といえば、自分にとっては、『禁色』と『仮面の告白』だけ…

苦手な作曲家「プーランク」−ヤヌスの仮面の下には?

珍しくアーティストの記事を書くのに、その私生活から入る。『プーランク』はゲイであった。アーティスト個人を扱う場合に、その作品こそがすべてであって私生活に踏み入るのはタブー視される傾向があるが、自分もある程度は同感だ。だが、「プーランク」に…

埴谷雄高の『闇のなかの黒い馬』

本当は、三島由紀夫の記事を書こうと思ったが、気が萎えたので『埴谷雄高』のことを書く。 ここで述べるのは、『闇のなかの黒い馬』という彼唯一の短編集。(『虚空』は短編集ではないだろう。そして当然『死霊』など扱えない、通読していない。) 彼は徹頭…

「チャールズ・アイヴズ」のピアノ曲−難解なのか?

以前からある変なCDを再聴して、「この人は一体なんだろう?」との疑念が深まった。 詳細はhttp://www.amazon.com/A-Portrait-of-Charles-Ives/dp/B00000DNRD/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=music&qid=1227390435&sr=8-3 『チャールズ・アイヴズ』の発言をまず引用し…

「セックス・ピストルズ」の落とし子達−不器用なゲイ「トムロビンソン」&スマートな「ピート・シェリー」

初めて『トム・ロビンソン・バンド』の曲を聴いた時に「なんか素軽くないバンドだな」と感じた。そのヒット曲が「2-4-6-8 Motorway」という曲。『セックス・ピストルズ』の影響で音楽活動を始めたと知るも、随分と音楽の方向性が違うとの印象。 彼の略歴がよ…

詩人『吉岡実』!

国内の詩人で、いまだに好きなのは『吉岡実』。詩について述べるは容易ではないので、ここでは彼の詩をそのまま幾つか紹介しよう。 1 四人の僧侶 庭園をそぞろ歩き ときに黒い布を巻きあげる 棒の形 憎しみもなしに 若い女を叩く こうもりが叫ぶまで 一人は…

解釈不要の「ツィゴイネルワイゼン」

自分の子供の頃はもっと自由に映画について勝手にあれこれしゃべっていたと思う。『去年マリエンバードで』をみて「うーん訳が分からん」とか『ブレードランナー』をみて「凄い!傑作だ!」とか。 それがいつの頃からか、映画をみる際に自由に個人が語ること…

「異色作家短編集」−『赤い影』を観てデュ・モーリアを読もう

『異色作家短編集』をこれから不定期に取り上げていきたい。最初はマイナーな「デュ・モーリア」*1を選ぶ。デュ・モーリアといえば、ヒッチコックの「鳥」&「レベッカ」の作者として余りにも有名だが、本来彼女の作風はサスペンスではない。どちらかと云え…

傑作吸血鬼漫画ー『ヘルシング』

吸血鬼の定義は曖昧だと思う。『羊たちの沈黙』の中で脇役の警官がJ.フォスターに「彼(ハンニバル・レクター博士)は本当にドラキュラだと思う?」と尋ねるシーンで首を捻った。どう考えてもレクター博士は「人食い(カンニバル)だろう。」では、吸血鬼と…

あっと驚く競馬!―逃走論の美学???

競馬に興味の無い人も多いだろう。自分は競馬に関しては「見」(馬券を買わずにレースを見ること)のスタイルが現状だが、レースを見ていて興味を惹かれるのは全国ウン万人の熱烈な競馬ファンが”ポカン”とするような結果だ。そういうレースの中に「逃げ切り…

ウィリアム・フリードキン

『ウィリアム・フリードキン』=『エクソシスト』*1の監督という構図が出来上がってしまっている。勿論『エクソシスト』は個人的に好きなホラー。彼自身の生い立ちはよく知らない。ただ、貧しい少年時代を送ったようだ。 Friedkin's mother was an operating…

パラジャーノフの素晴らしさー魔術的な色彩感覚

パラジャーノフといえば『火の馬』、『火の馬』と言えばパラジャーノフ。それが一般的な評価。その彼の作品が何故か日本でデジタル・リマスター版で続々と出て、その中の『サヤト・ノヴァ(邦題:ざくろの色)』*1という作品に出会い衝撃を受けた。ざくろの…

ルイス・ブニュエル賛

ルイス・ブニュエル(Luis Buñuel)といえば『アンダルシアの犬』ばかり喧伝されているような気がする。 ストーリーとしては何が何だか全然わからないっていうようなもんなんですが、夢を描くのも現実を描くのも同じ映像なのだ、素材は同じだと思うと突然わ…

奇妙な味から、シド・バレットまでの主題無し記事

”奇妙な味”と江戸川乱歩が名付けたジャンルがある。 初めてその魅力に取り憑かれたのは「世界短編傑作集」がきっかけ。世界短編傑作集 4 (創元推理文庫 100-4)作者: E.ヘミングウェイ,江戸川乱歩出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1961/04/07メディア: 文…

一方の大人ーエリスンとW.シャトナー

ハーラン・エリスンの作品がなかなか読めない。 「世界の中心で愛を叫んだ獣」は出ているが、重要&傑作が含まれていない。私的ハーラン・エリスンBEST3 「死の鳥」 The Deathbird 「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」 I Have No Mouth, and I Must Sc…

初回のブログ更新&行進中の下書き

はてなで初めて書いてみる。 はてなを選んでみた理由は3つ。 ①動画が簡単にUPできる事 これはD.BowieのAshes to ashesの映像、優れていると思う。この歌の中で彼は「We know the major Tom is the junkie」と過去の自分の名曲を否定している。”物語”を語っ…