ウィリアム・フリードキン

ウィリアム・フリードキン』=『エクソシスト*1の監督という構図が出来上がってしまっている。勿論『エクソシスト』は個人的に好きなホラー。彼自身の生い立ちはよく知らない。ただ、貧しい少年時代を送ったようだ。

Friedkin's mother was an operating room nurse. His father was a merchant seaman, semi-pro softball player and ultimately sold clothes in a men's discount chain. He never earned more than $50/week in his whole life and died indigent.
http://www.imdb.com/name/nm0001243/bio

その彼の初期監督作品に『真夜中のパーティ』という作品がある。随分前に偶然中古ヴィデオで買い、観て驚いた。1970年制作の映画というのに、全編これ”ゲイ”のオンパレード。裏面解説にはこう書いてある。

「『アナザー・カントリー』や『モーリス』などで、ゲイ・ピープルがファッショナブルになる以前の1970年に制作されたこの映画は、米映画界が初めて本格的にホモセクシュアルを取り上げた衝撃の問題作!
男を愛するがゆえに、差別されるマイノリティーたちの一夜のパーティ。人を愛し、嫉妬し、傷つけ合い、悩み、悲しみ、そして生きて行く。人間の持つ性を9人の男たちのウィットと毒と刺を含んだ会話で表現し、乾いた笑いの中で現代の孤独と失意を描き出した迫真の秀作」
『真夜中のパーティ』ヴィデオケース裏面クレジットより引用

では、チラッと動画を紹介。

ハリウッド映画史において初めて「ゲイを真正面から描いた」作品(セルロイド・クローゼットより)。

ちなみに引用した『セルロイド・クローゼット』*2という作品も、主題から逸れるが素晴らしいので紹介を!(幾つかあるYoutubeから一番良いのを選択も、ラスト約1分が何故か欠けている)

エクソシスト』で超メジャーにのし上がった彼の次作が『クルージング』というA.パチーノ主演のバリバリの”ハードゲイ”映画だった(大失敗も)ことも考えると、「何故こんな作品を撮ったのか?」と疑問が沸く。駄作ながら一応動画を紹介。

(『エクソシスト』について)「ストーリーが良かったから、映画を作ったんだ。この映画がどんな心理的影響を及ぼすなんて、考えたこともなかった」

『クルージング』は大失敗と述べたが、『エクソシスト』の次作にこの映画を撮ったのかは、『クルージング』も単に脚本が良かったと感じたからなのか?
また最近では『英雄の条件』という戦争映画も監督している。

本作品のアラブ人の特徴の描写は、広範囲に及ぶ批判を招いた。 アメリカアラブ反差別委員会は、「おそらく、これまでのハリウッドの作品で最もアラブ人に対して差別的な作品」と評した[1]。

ボストングローブ紙のポール・クリントンは、 「悪く言えば、露骨に人種差別的で、風刺漫画の悪役のようにアラブ人を利用している」と評した。

映画評論家マーク・フリーマンは、「(本作品において)イエメン人は、考えられるうちの最も人種差別的な描かれ方をした。フリードキン監督は、イエメン人のこわばった表情を誇張し、また、彼らの奇怪な容姿や様式、辛辣な言語、暴力への強い欲求を誇張した。(本作品の鍵となる)"真実"が終盤で開明されるとき、本作品の人種差別的意図はより強調される。本作品のメッセージとは、アメリカに批判的な勢力や女子供を殺すことを活発に許容する必要性のことだ」と評した。
英雄の条件 - Wikipedia

こんな或る意味政治的メッセージをも撮る彼。彼の真意は何処にあるのだろうか?


先にも引用した『真夜中のパーティ』裏面の最後はこうだ。

「・・・監督は、本作品が出世作で、『フレンチ・コネクション*3でアカデミー監督賞を受賞した名監督ウィリアム・フリードキン。」

そう、この『真夜中のパーティ』の時点では「あのエクソシストの監督ウィリアム・フリードキンではなかったのだ!!!」

「映画の文法」とは別にして、フリードキンの映画監督としてスタンスは今のところ自分には分かりがたい。

P.S.一応ホラーとしての記述が無いので、『エクソシスト*4の動画をUPしておくべきだろうが、安易に『エクソシスト』を選択するのもなにか芸が無い。そこで、最初の公開時にカットされた有名な「スパイダーウォーク」シーンと、数々のホラー映画を巧みに編集した傑作『Terror in the Aisles(邦題:ザッツ・ショック)』*5(肝心の『エクソシスト』のクリップは少ししか含まれていないんですが)を紹介して終わろう。

*1:エクソシスト』という作品の詳細については、別の機会に触れる。この記事では触れない

*2:詳細はセルロイド・クローゼット - Wikipedia

*3:フレンチ・コネクション - Wikipedia

*4:そういえば使われた音楽の”マイク・オールドフィールド”の『チューブラー・ベル』もこの映画で再注目されましたね、忘れてた。

*5:これ自分の宝物なんです!