永遠のお別れー『キング・クリムゾン』/やがてお別れ?『アファナシエフ』

「私はここに居たこともあれば、あそこに居たこともある。そしてその真中にも」というキング・クリムゾンの歌にある。一九七四年、モスクワを離れる最後の夜に、私はこのレコード(《クリムゾン・キングの宮殿》)を聴いていたこを思い出す。 (中略) 他方…

束の間のアンソロジ−『筋肉男のハロウィーン』&『SF戦争10のスタイル』

注文した本が届かない。仕方なく本棚から二冊ほど文庫のアンソロジーを読む。筋肉男のハロウィーン―13の恐怖とエロスの物語〈2〉 (文春文庫)作者: ミシェルスラング,Michele Slung,吉野美恵子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/11メディア: 文庫購入: 1…

『HELLSING』完結!−吸血鬼について私が知っている二、三の事柄

次に、傷口を舐めながら血を飲む。そして永遠が続く限り続くにちがいないこの時間ずっと子供は泣く。今言ったようにして抜き取った、まだ、ほかほかと温かい子供の血ほどうまいものはないぞ。塩のように苦い彼の涙を別にすれば。人間よ、君はたまたま指を切…

『稲垣足穂』の私的小説−『一千一秒物語』のDarkSide

私小説は、好かない。が、ここでは『稲垣足穂』を少し紹介しよう。 ネットをちらほらみていたら、『稲垣足穂』を知らない人も多いという文章を目にした。 http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0879.html小説を紹介するには、原文を引用するに勝る手段が思…

エイズとは何だったのか?−『隠喩としての病 エイズとその隠喩』

エイズの発祥の地域がアフリカだということは、一応専門家の間でも一致しているらしい。 もし、この病が”対岸の火事”であったなら、この病気をめぐる様々な言説は生まれなかったろう。 そしてエイズは、疫病を説明する古典的なスクリプトをなぞるがごとくに…

『モダン・ネイチャー』−デレク・ジャーマンの日記を読んで

これは、「デレク・ジャーマン」の日記だが、タイトルの意味が最後の訳者後書きを読むまで分からなかった。 最初から最後まで、余りに庭の植物への記述が多いので、それで「ネイチャー」なのかと誤解していた。 「モダンネイチャー」というタイトルについて…

『平田俊子』詩集を読んで−掃除の間の読書

平田俊子の詩集が出てきた。読み返して時間を潰す。 詩は引用に適していると思う、ので冒頭の代表作「ラッキョウの恩返し」から。 「ラッキョウは苦手なんです」「そうかい 僕は好きだよ」 こんなたわいない会話を誰かが聞いていたのだろうか 次の日からラッ…

中井英夫の『流刑地にて―ホモ・セクシュアルについて』−月光領域に生きる覚悟

中井英夫氏には、生涯一度だけのファンレターを書いたことがある。 返事のハガキには「一度遊びに来て下さい」とあったが、行かずじまいで終わった。 氏の『流刑地にて―ホモ・セクシュアルについて』は1979年9月に書かれたエッセイ。 当時と今の同性愛…

「このミステリがすごい」&「20世紀の幽霊たち」

そろそろ各ジャンルで今年のベスト10とかが発表される時期になった。 (出版社の思惑が働いていると知りつつ)「このミステリーがすごい!」の2009年版を読む。 海外部門のBest1は『チャイルド44』。これについては、異論はない。チャイルド44 上巻 (新…

『エソルド座の怪人』−未知の作家が溢れている!

『エソルド座の怪人』は、「異色作家短編集」の最新版の最後第20巻で、旧版にはなかった世界各国の作家のアンソロジー。エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇 (異色作家短篇集)作者: G・カブレラ=インファンテ・他,レイモン・クノー,ナギーブ・マフフーズ,…

「異色作家短編集」−『赤い影』を観てデュ・モーリアを読もう

『異色作家短編集』をこれから不定期に取り上げていきたい。最初はマイナーな「デュ・モーリア」*1を選ぶ。デュ・モーリアといえば、ヒッチコックの「鳥」&「レベッカ」の作者として余りにも有名だが、本来彼女の作風はサスペンスではない。どちらかと云え…