図書館幻想−「ボルヘス」・「諸星大二郎」・「ランガナタン」

ボルヘス」の「バベルの図書館」を再読。ごく短い短編だが、数回読む。

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

全体的な感想はおいといて、些細なことに疑問がわく。
この作品で、”六角形”が重要なモチーフとなっているようだが、何故六角形なのか?
(以下、抜粋)

(他の者たちは図書館と呼んでいるが)宇宙は、真ん中に大きな換気孔があり、きわめて低い手すりで囲まれた、不定数の、おそらく無限数の六角形の回廊で成り立っている。どの六角形からも、それこそ際限なく、上の階と下の階が眺められる。

図書館は、その厳密な中心が任意の六角形であり、その円周は到達不可能な球体である。

早速六角形に関して一番頼りになると思う本を探したのだが、見つからない。
実家はバベルの図書館どころか、無限図書館(後述)ですらない。せいぜい”猫の図書館”だ。
それでも見つらず、諦める。だが、バベルの図書館の住人たちに諦めという概念はあり得ない。

図書館のすべての人間とおなじように、わたしも若いころよく旅行をした。おそらくカタログ類のカタログにある、一冊の本を求めて遍歴をした。この目が自分の書くものをほとんど判読できなくなったいま、わたしは、自分が生まれた六角形から数リーグ離れたところで、死に支度をととのえつつある。死ねば、手すりからわたしを投げてくれる慈悲ぶかい手にこと欠かないだろう。わたしの墓は測りがたい空間であるにちがいない。わたしの遺体はどこまでも沈んでゆき、無限の落下によって生じた風のなかで朽ち、消えてしまう。断言するが、図書館は無限である。

さて、本が無い以上ネットで検索するとロクなものが無い。”Hexagon”でググっても同様。
ここでハタと気づく。空間なのだから、3次元だと(バカです)。”六角形”や”Hexagon”でヒットする訳がない。
自分の先入観で、こんな部屋だと思いこんでいた。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

だけど、これSF的イメージで、上下左右に各六角形の部屋に通じていると勝手に思い込んでいた。
(そうあって欲しいとの幼稚な願望からだ!)。

ではこんなのはどうだろうか?(”切隅六面体/The truncated hexahedron”というらしい)。

これも、建築上無理がありそうだし、大体”八角”じゃないか!

もう一度原文を読み直すと全然違う。

一辺につき長い本棚が五段で、計二十段。それらが二辺をのぞいたすべてを埋めている。その高さは各階のそれであり、図書館員の背丈をわずかに超えている。

なるほど四辺が本棚で占められ、残りは二辺で合計六辺、”底面は六角形”だな。
”ある一面が六角形”の多面体をいろいろ想像して遊ぶ(数学好きなんです)。
*1
とうとう四次元レベルまで行き着く。さっぱり理解出来ない。
四次元から、テセラクト、「ダリ」の超立方体的人体(磔刑)までとキリが無い!*2

「各面が立方体で構成された立方体なんて想像できないわ!」
「多次元幾何学を学びなさい。」

結果、遊び疲れて元に戻る。
話題が逸れすぎたので、そろそろ結論を出さねば。
建築については知識ゼロだが、CADのこんなYoutubeを見つけたので参考にする。

やはりバベルの図書館の各部屋は”正六角柱”だと思う。
これに原文の”図書館員の背丈をわずかに超えている”を考慮すると、これが正解に近いのか?
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
*3
既知の通り「ボルヘス」は盲目になった後に、国立図書館長の職に就き、作家活動も続けていった。
その彼と「バベルの図書館」をモデルにした映画が、あの「薔薇の名前」だ。*4
では「薔薇の名前」から”六角形からなる図書館”が微かに検証出来そうなシーンをYoutubeでみてみる。

本当は、この映画の原作「ウンベルト・エーコ」の「薔薇の名前」を読み返せば良いのだが、実はこれも”猫の図書館”を再捜索むなしく行方不明。
どのように六角形の部屋が描かれていたのかはさっぱり記憶にないし・・・。


自分は滅多に図書館には行かない。本はあくまでも購入する(古本屋とかも含めて)。
でも、この記事を書いていると、見つからない本に苛立ち、行ってみようかとも思った。


最後に、「諸星大二郎*5の「栞と紙魚子」という作品を*6
なんとこのシリーズの最新作「栞と紙魚子の百物語」が2008年、第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞していたのだ。*7
でも、面白さから云えば、「栞と紙魚子の生首事件」や「栞と紙魚子 殺戮詩集」あたりも更に面白い。
多分”生首”や”殺戮”という言葉がネックになって受賞出来なかったのではないか?*8

[rakuten:book:12517336:detail]
[rakuten:book:12517338:detail]*9
もし「諸星大二郎」の作品を初めて読むならこれかなぁ。
「アダムの肋骨」(自分が最初に読んだもの。古いので見つからず仕方無いので下記を紹介)。

不安の立像 (ジャンプスーパーコミックス)

不安の立像 (ジャンプスーパーコミックス)

これ絶対推薦します。興味をもたれたら、こちらが充実しています。諸星大二郎博物館*10
蛇足:TVはみないが、このシリーズがドラマ化されているのをYoutubeで知りました。
(多分削除されると思うが”無限図書館”なるのが出てくるので参考までに)。



P.S.図書館といえば、いまだに分からないのが「ランガナタン*11の分類法。
コロン分類法といってもねぇ?ただ、熱狂的支持者が多いのも事実。
でも、今でもこれだけ研究されているんだからきっと”何かがあるんでしょう”(自分には分かりません)。

コロン分類法は、出版物の並び替えをさらに明確にするための「PMEST]と呼ばれる5つの主要なカテゴリやファセットを用いる。

, パーソナリティー(personality)
; マター(matter or property)
: エネルギー(energy)
. 空間(space)
' 時間(time)

参照:コロン分類法 - Wikipedia

これ、英語のWIKI丸写しだし、他も似たりよったり。ただ、なんか哲学的な雰囲気はする(自分は何も知らない)。
本当に知りたい人がいるなら原典をよむべきだろう(いても、この自分の記事など読まないとは思うが)。
参照までに。↓
DLIST

以上、下書きしてあったのを早朝にUPしたので間違いや見苦しい点はご容赦下さい!

*1:切頂二十面体(せっちょうにじゅうめんたい、truncated icosahedron)。”正六角形”が20枚ある。

*2:ダリに関しては話題が拡がり過ぎるので、ただ一言”実物を見なさい!”画集とかと全然印象が違うから。

*3:底面が正多角形の角柱を正角柱(せいかくちゅう、regular prism)、底面も側面も正多角形(したがって側面は正方形)の正角柱をアルキメデスの正角柱またはアルキメデスの角柱 (Archimedean prism) という。特にアルキメデスの正角柱だけに限って正角柱という場合もある。

*4:薔薇の名前』の図書館のイメージはここからきているとされ、またその登場人物である図書館長ホルヘはボルヘス自身がモデルであるとされる。

*5:ユリイカの3月号は彼の特集です!」

*6:図書館となんの関係があるかは、後述の”無限図書館”絡みからです

*7:大賞なら気付いていたハズ。他に「マエストロ」、「宗像教授異考録」も優秀賞受賞。

*8:別に文部科学省のお墨付きなんていらないけど。

*9:アマゾンに画像無し。仕方なく楽天で。表紙を見て欲しかったので。

*10:諸星大二郎博物館

*11:発音はこれでいいのか?どこにアクセントを?